さて、どうして私の労働ビザ(H1B)は却下されてしまったのか?
却下の通知のあと、移民局からはその理由を説明した6枚ものレターが来た。H1ビザのポイントに置き換えて書いてみると・・・
A)H1ビザは、専門職のビザ。原則大卒で、その専攻にかなった分野に特化した仕事に就くことが条件。(私で言えば、会計分野で大卒者がやるにふさわしい仕事)
B)でも、専門職だからOKというわけでなく、会社(スポンサー)のニーズとその人のキャリアがマッチしていることがキー。会社は、なぜそのポジションが必要なのか、なぜこの人でないとだめなのか?それを会社の財政的にも業務的にも細かく証明しなくてはならない。
会計というと、広範囲の「社会学」とか「経済」「ビジネス」専攻よりはっきりしているので問題なさそうなのだが、移民局の説明を見ると、かなーり細かくチェックされ、結局は現在の会社の求人と私のキャリアがマッチしないとみなされた。
はっきりいって、実際の仕事とその人のキャリア・レベルが合っていないケースなんていくらでもある。だからこそ弁護士という商売があって、うまーく辻褄が合うように書類を作ってくれるんだけど!
でも、私の場合、本当に会計職で、特別なトリックを使うまでもなく、会社の必要なことをやっているんだけど。だから却下となって一番驚いたのは、実は私の弁護士なのだ。
移民局の審査官だって人の子、甘い人と厳しい人がいるとは聞くが、私は思いっきり厳しい人に当たったのだろうか?
ただ私は、決して謙遜でなく、語学力も専門性も低いことは事実だ。それは、会計だけに没頭せず、興味のあるNPO活動などにも精を出しているという自業自得の結果なのだが・・・。こんな程度の私が今まで働けていたのがラッキーとさえ思う。
専門的な知識、スキル、経験がある人には、もちろんビザは下りている。要は、アメリカ社会・経済に貢献できる人ってこと?(ついでに高給で税金をたくさん納める人?)
反面、繰り返すが、会社の求人とのマッチングがキーなので、例えばだが、私が別な会社で申請していたら、あるいは別な弁護士を使っていたら、通っていたかもしれない。本当に本当はどう判断されたのかは謎だ。
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それにしても、最近は以前より審査が厳しくなっていると周囲でよく聞く。理由はもちろん、アメリカ人の雇用を優先するため。私の今回の却下も、解釈によっては、「このポジションはアメリカ人でもいいんじゃないの?」と言っているようにとれなくもない。
これまでは、H1ビザは新規取得こそ難しいが、一度取ってしまったあとのTransfer(転職)は簡単、という認識がみんなあった。だから、今回の私の状況を聞いて驚く人は多かった。「え?Transferでそんなことありえるの?」と。
しかし、最近はそのTransferやビザ延長手続きで引っかかる人が多いらしい。
知人が勤める日系の会社は、ことごとくH1 Transferの却下が続き、気がつけば、アメリカ市民か永住権を持つ人だけがオフィスに残ったとのこと。
またある知人はH1ではないが、10年以上もビザが安泰していたにもかかわらず、最近の更新で急遽却下されたとのこと。仕事を順調にこなし、会社の状況も何も変わっていないのに。その家族も私と同じように、10数年の生活をバタバタと締めくくり、子どもの転校手続にずいぶん苦労して帰国していった。
ビザスポンサーになることを止める日系の会社もリーマンショックの後、ぐっと増えた。やはり、弁護士費用・申請費用などのコストがかかるから。費用と労力をかけても申請が却下されることが増えれば、スポンサーを止める会社はもっと増えるかもしれない。
各種労働ビザ、分野によっては引く手あまたなんだけどな。それは、IT,数学、医学、エンジニアリングなどのサイエンス系。この分野はインド人が圧倒的に多い。そういや、アメリカに長くいたいと、アート系からサイエンス系に専攻を変えた大学の留学生の友人、いたな。
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このビザを取り巻く状況を踏まえ、それでもアメリカに戻りたいならいくつかの道はある。
(つづく)